学童保育(放課後児童健全育成事業)とは?

学童保育とは、小学校に通う児童を対象に、放課後や長期休業日に安全な居場所と生活・遊びの場を提供する事業です。共働き家庭やひとり親家庭などで、授業終了後に家庭で子どもを見られない場合に児童を預かり、子どもの健全な育成を図ることを目的としています。学童保育には各自治体が運営または委託する「放課後児童健全育成事業」(通称:放課後児童クラブ)と、企業やNPO等が独自に運営する「民間学童保育」があります。前者は児童福祉法に基づきこども家庭庁(以前は厚生労働省)が所管する公的サービスで、公費補助によって低料金で利用できるのが特徴です。後者はいわば民間の学童クラブで、行政の枠外で独自に施設を開設し、柔軟な営業時間や多彩なプログラムを提供しているものです。近年、働き方の多様化に伴い長時間預かりや特色あるプログラムへのニーズが高まり、公設学童と民間学童の双方が学童保育市場を支えています。

学童保育の成り立ちと制度的な背景

日本の学童保育は、1950年代後半(昭和30年代)に働く母親の増加による「鍵っ子」問題への対応として地域の自主的な取り組みから始まりました。当初は地域の保護者グループや自治体有志による自主運営が各地に広がり、1976年(昭和51年)に国が「留守家庭児童対策事業」として初めて補助金を交付したことで、公的支援がスタートしました。さらに1997年の児童福祉法改正により学童保育が法律上位置付けられ、1998年度から正式に「放課後児童健全育成事業」として制度化されます。以降、国の補助の下で受け入れ枠の拡大や質の確保が進められ、学童保育は社会福祉事業の一つとして全国に定着しました。

制度面では2015年度(平成27年)の子ども・子育て支援新制度の施行に伴い大きな拡充が行われました。学童保育の対象学年が従来の「おおむね10歳未満」(小3程度まで)から小学6年生までに引き上げられ、高学年まで含めた受け入れが可能となりました。またこの時、施設や運営に関する基準が省令で定められ、放課後児童クラブ専用資格である「放課後児童支援員」も創設されています。こうした制度強化によって学童保育は法律に基づく全国共通の基準を持つ事業となり、量的拡大と質の担保が図られるようになりました。

一方、2007年以降は文部科学省所管で全児童を対象とした「放課後子ども教室」(愛称:○○キッズクラブ等)も展開されています。これは親の就労に関わらず全ての児童に放課後の居場所を提供しようという施策で、地域のボランティアや教員OBなどが見守り活動を行うものです。学童クラブとは別事業ですが、2018年には厚労省(当時)と文科省が連携して「新・放課後子ども総合プラン」を策定し、放課後児童クラブと放課後子ども教室の一体的・連携的な運営を推進する方針が打ち出されました。これにより地域ぐるみで全ての子どもに安全で充実した放課後の場を保障する取り組みが進められています。

現行制度の概要(対象児童・職員配置・施設基準・補助金制度)

対象児童: 放課後児童健全育成事業の対象となるのは「学校に就学している児童で、その保護者が労働等により昼間家庭にいない児童」(保護者が疾病や介護の場合等も含む)と定義されています。つまり主に小学校に通うおおむね6~12歳の児童で、共働き家庭やひとり親家庭など昼間に保護者のいない子どもが利用対象です。2015年の制度改正以降は小学6年生まで全学年が公式に対象となり、それ以前は受け入れが難しかった高学年の児童にも門戸が開かれました。また近年では障がいのある児童への対応も重視され、加配職員の配置やバリアフリー化など、特別な支援ニーズを持つ子どもにも利用しやすい環境づくりが求められています。

開所日・時間: 学童保育は平日の放課後から夕方にかけて開所し、一般的な公設クラブでは概ね平日は18時前後まで預かるところが多くなっています。学校休業日(夏休み・冬休み等)には朝から夕方まで日中開所し、児童を受け入れます。自治体によっては土曜日にも開所する学童クラブがあります。公立学童の場合、標準的な終了時間は18時あるいは18時半頃ですが、延長保育を設けて19~19時半まで対応する所も増えています。特に都市部では保護者の勤務時間に合わせて延長を求める声が強く、一部の自治体では利用者負担を上乗せする形で20時前後まで延長預かりを実施しています。民間学童保育ではさらに柔軟性が高く、20時~22時頃まで預かったり、朝の登校前や休日の預かりサービスを提供したりして、保護者の多様なニーズに応えています。

職員配置と資格: 放課後児童クラブには安全管理上、原則として2名以上の職員配置が必要とされています。そのうち最低1名は都道府県知事の認定する有資格者、つまり「放課後児童支援員」であることが求められます。もう1名は補助員(資格のないスタッフ)でも可能ですが、自治体によっては条例で独自に全員有資格者とするなど厳格な基準を設けている場合もあります。国の省令上では児童おおむね40人につき職員2人という配置基準が示されています(1クラブ=40人程度を1単位とする考え方)。しかし実際には40人を大人2人で見るのは目が行き届かないとの指摘も多く、可能な限り手厚い人員配置が望ましいとされています。制度開始当初の2015年頃には「支援員(有資格者)2名配置」が義務付けられましたが、深刻な人材不足を背景に2020年からは努力義務(参酌基準)へと緩和されました。それでも質の確保のため、複数の有資格者を配置するクラブには補助金を加算配分するなどの優遇措置が講じられています。また放課後児童支援員の資格取得要件としては、保育士・教員免許・社会福祉士などの資格保有者や児童福祉事業の実務経験者等が都道府県の研修を修了することが必要です。支援員の専門性向上と待遇改善は喫緊の課題であり、最近では処遇改善のための加算措置やキャリアアップ研修制度も整備されつつあります。

施設・設備基準: 学童保育は小学校の余裕教室、児童館、公民館、さらにはマンションの一室など様々な場所で運営されています。省令により児童1人当たり約1.65㎡以上の専有面積や、安全設備(非常口・消火設備等)、衛生環境など最低限満たすべき基準が定められており、各自治体はそれに沿って具体的な設備基準を条例で規定しています。1つのクラブ(支援の単位)あたりの定員は概ね40人以下とされ、定員を大きく超える場合はスペースを拡張したり職員を増員して、複数単位に分けて運営することが望ましいとされます。障害のある児童を受け入れる場合には、出入口やトイレのバリアフリー化、専門知識を持つ職員の加配なども推奨されています。新規に放課後児童クラブを設置する際には、学校敷地内に専用室を設けたり、地域の未利用施設や民間物件を活用したりと、地域の実情に応じた工夫が行われています。

利用料と補助金: 公設(自治体運営または委託)の学童保育では、保護者の支払う利用料は自治体によって差がありますが、月額数千円から高くても1万円前後に抑えられているケースが多く見られます(生活保護世帯やひとり親世帯等は減免措置あり)。これだけ低廉な料金で運営できるのは、国と自治体からの補助金によって人件費や運営費の大半が賄われているためです。国は放課後児童クラブの運営費に対し「放課後児童健全育成事業補助金」を交付しており、例えば年間250日以上開所・定員40人前後の標準的なクラブ1か所あたり、国から年間約473万円の補助(基準額)が出ます。さらに民間の建物を借りて運営する場合の家賃補助(年間最大約200万円/1クラブ)や、新規開設時の施設改修費補助など、開設・運営を支える多様な助成メニューがあります。自治体も国庫補助と同額程度を上乗せしたり、独自補助を設けたりしており、公的資金で運営経費の大部分を賄う仕組みです。なお2024年度政府予算では、放課後児童クラブの施設整備費等に約159億円が計上されました。これは待機児童の解消や受け皿拡充に向けたもので、今後も財政措置を拡充しつつ学童保育の量的拡大が図られる見込みです。

民間企業の参入状況と多様化するサービス

近年、公的学童保育だけでなく民間企業やNPOによる学童保育事業への参入が活発化しています。参入形態は大きく2通りあり、一つは自治体から放課後児童クラブの運営を受託する「公設民営」型、もう一つは企業等が自主的に施設を設置してサービスを提供する「民設民営」型(民間学童)です。前者は指定管理者制度や業務委託契約により自治体の学童クラブ運営を担うもので、社会福祉法人・NPO・株式会社など様々な主体が参加しています。後者は行政の枠外で独自に学童施設を開業し、利用者からの利用料収入で運営するビジネスモデルです。国の制度上、学童保育への株式会社等の参入は禁止されておらず、自治体の方針次第で民間の活用が進められてきました。実際、首都圏を中心に自治体設置クラブを民間事業者に委ねるケースが年々増加しており、地方都市でも指導員の確保難やサービス向上の観点から民間委託に踏み切る自治体が見られます。

民間事業者の学童保育への関与はこの10年ほどで大きく拡大しました。全国学童保育連絡協議会の調査によれば、企業が運営する学童保育施設の数は2013年時点で409か所だったものが、2016年には1,207か所と約3倍に増加しています。その後も増加傾向は続き、学童クラブ全体に占める民間委託(公設民営)や民間学童(民設民営)の割合は年々高まっています。現在では、学童保育の運営主体として自治体直営だけでなくNPO・株式会社など多様な主体が共存しており、業界としても多彩なサービスモデルが生まれています。

民間学童保育のサービス内容は、公的学童にはない特色や利便性を打ち出すことで差別化が図られています。代表的な例として、次のようなタイプの民間学童が存在します。

  • 語学(英語)特化型: 学習塾大手などが展開する「英語漬け」の学童保育です。外国人スタッフと英語で過ごす環境を整え、遊びや活動もすべて英語で行うことを売りにしています。全国規模で教室を展開する大手もあり、送迎バス付きで夜20~21時頃まで対応するなど共働き家庭への手厚いサービスを提供しています(月額料金は週5日利用で7~8万円程度と高額)。
  • 学習塾連携型: 教育サービス企業が運営する学童クラブで、独自の学習サポートを組み込んでいるタイプです。例えば通信教育や学習塾を手掛ける企業が、自社教材を使った宿題サポートや読書の時間を設けたり、高齢者施設との交流イベントなど独自プログラムを提供しています。夜21時頃まで開所し、月額利用料は4~5万円程度に設定されるケースが多いです。
  • 長時間対応型: 学習塾チェーンなどが夕方以降も引き続き子どもを預かり、22時近くまで対応する学童もあります。日替わりで学習・実験・イベント等のプログラムを用意し、保護者の帰宅時間まで子どもが安全に過ごせる環境を整えています。料金は教室やサービス内容によりますが、週5日フル利用で月6万円前後になる例が見られます。
  • スポーツ・スイミング併設型: スイミングスクールや体育教室が放課後の預かり機能を兼ねて学童保育を行うケースです。運動プログラムを日常的に取り入れ、放課後にそのまま水泳や体操のレッスンを受けられる利点があります。体を動かす習い事と保育が一体化しており、子どもの健康増進と時間効率を両立できるモデルです。
  • プログラミング・STEM型: 子ども向けプログラミング教室が放課後の預かりサービスを付加した形態も登場しています。ゲーム制作やロボット工作など、日替わりでIT・科学系のワークショップを実施し、遊びながらSTEM教育の素地を育む内容です。将来のスキル教育に関心の高い保護者層に支持され、子どもたちも最新のテクノロジーに触れられる場となっています。

このように民間学童業界はサービスの多様化が進んでいますが、全体としてはまだ乱立期にあり、突出した寡占的な大手企業が存在する状況ではありません。多くの事業者は小規模経営で、資金力や人材面で模索しながら運営しているのが実情です。そのため業界内での情報共有や品質向上の取り組みが課題となっており、有志のネットワークや勉強会でノウハウを共有する動きも出ています。公的制度にない柔軟なサービス提供が可能な民間ならではの強みを活かしつつ、基本的な安全・安心は確保するというバランスが求められており、利用者の信頼を得るための自主的な基準作りや認証制度の必要性を指摘する声もあります。

学童保育事業の収益性とビジネスモデル

学童保育事業の収入構造は、公的補助のある放課後児童クラブと、民設民営の民間学童とで大きく異なります。公的学童(放課後児童クラブ)では主な収入源は自治体からの委託費・補助金と保護者の利用料です。利用料1人あたりは月数千円と低く抑えられているため、クラブ運営に必要な人件費や光熱費・おやつ代等の大部分は公費で賄われます。自治体から民間事業者が運営を受託する場合、契約上は「指定管理料」や「業務委託料」という形で年間の運営費が支払われ、その範囲内で適正な利益を確保するビジネスモデルになります。しかし自治体の財政事情等から委託料は必要最低限に抑えられる傾向が強く、大きな利益を上げるのは難しいとされます。実際、委託運営する企業・団体の多くは事業としてギリギリ成り立つ水準で経費を切り詰めているのが現状です。そのため、一部の受託事業者は標準時間外の延長保育や教材費・おやつ代など追加料金を設定し、公定の委託料にプラスして保護者負担で収入を補う工夫も行っています。ただし公的クラブの場合、あまりに高額な追加徴収は本来の趣旨に反するため、自治体の許可範囲内で限定的に行われます。

一方、民間学童(民設民営)の場合、基本的に運営費は全て利用者からの利用料収入で賄います。公的補助がない分、月額料金は高めに設定されており、前述のように月4~8万円程度の価格帯が一般的です。その代わり、少人数制で手厚い保育を提供したり、送迎サービス付き、専門講師によるレッスン付きなど、付加価値の高いサービスを盛り込んで高所得層・教育熱心な層のニーズを取り込む戦略を採っています。例えば放課後に英会話・プログラミング・ピアノ・水泳といった習い事を複数組み合わせて受けられるコースを用意したり、長期休暇中には特別プログラム(サマーキャンプ等)を別料金で企画するなど、収益機会を広げる工夫も一般的です。

民間学童の収益性について、多数の習い事を組み込んで付加価値を高め、高額な月謝にも関わらず地域の需要を的確に捉えたことで定員フル稼働を実現できた例もあります。ただし、このようなケースは特異であり、民間学童全体では利益確保に苦戦する事業者も少なくありません。特に人件費(指導員の確保)や賃借物件の家賃負担が重く、定員割れすれば赤字に陥りやすいモデルです。そのため多くの民間学童は採算ラインに乗せるためにサービス内容や営業努力を工夫しており、市場環境(対象エリアの所得水準や子どもの数)に大きく左右される脆さもあります。

また、民間学童の利用者層は現状では比較的裕福な家庭が中心となりがちです。高額な月謝を支払えない家庭にとって民間学童は選択肢に入らず、公的学童との間で子どもが受けられる経験の「格差」が広がる懸念も指摘されています。実際、経済的余裕のある家庭の子どもは放課後に多彩な習い事や体験活動を享受できる一方、経済的に厳しい家庭の子どもは最低限の居場所と見守りしか得られないという二極化が生まれつつあるとの声があります。この問題に対し、一部では民間学童のプログラムを地域の公的クラブにも還元したり、誰でもスポット(一日単位)で利用できる仕組み、オンラインで安価にプログラム配信を行う試みなどが始まっています。例えば、ある民間学童では在籍していない地域の子ども向けに長期休暇中の特別講座を開放したり、また別の事業者ではオンラインで参加できるプログラミング講座を低料金で提供するといった工夫が見られます。さらに民間で培った教材・指導法を汎用化し、公設学童の活動に取り入れてもらうよう働きかける動きもあります。こうした公民連携やサービス開放の取り組みはまだ始まったばかりですが、学童保育における経済格差・体験格差を是正し、全ての子どもに充実した放課後を届ける上で重要な試みとして期待されています。

今後の市場動向と展望(需要動向・政策の方向性・課題と期待)

需要増加と待機児童対策: 日本では女性の社会進出が進み共働き世帯が年々増加しており、それに伴って学童保育の需要も継続的に高まっています。2024年時点で放課後児童クラブを利用登録している児童数は過去最多の150万人超に達し、前年からも数万人規模で増加しました。公立小学校1~3年生の約4割が学童保育を利用しているとのデータもあり、放課後の居場所として学童保育は今や欠かせないインフラとなっています。一方で、待機児童(利用を希望しながら定員オーバー等で利用できない児童)の問題は依然として残っています。2024年5月時点で学童保育の待機児童数は約17,700人にのぼり、都市部を中心に「入所できない小学生」が発生しています。特に新年度開始直後の4〜5月や夏休み期間前には希望が集中しやすく、定員の不足が顕在化します。各自治体とも受け皿拡大に努力していますが、人口流入の多い地域では施設整備や人員確保が追いつかず、待機児童ゼロの実現は大きな課題となっています。

こうした状況に対し、政府は学童保育の受け皿拡充と待機児童解消を重要政策に位置付けています。2023年に発足したこども家庭庁は文部科学省と連携し、2024年末に「放課後児童対策パッケージ2025」を発表しました。これは令和6~7年度(2024~2025年度)に集中して取り組む学童保育充実策をまとめたものです。具体的には、待機児童の多い地域への重点支援、学校の余裕教室や公共施設を活用した受け皿整備、夏休み等の長期休業中における臨時受け入れ拡大への支援、民間事業者の新規参入支援、放課後児童クラブ従事者の処遇改善(人件費補助の充実)や業務負担軽減のためのICT導入支援など、多方面から待機児童解消にアプローチする施策が盛り込まれています。このパッケージに基づき、2024年度補正予算や2025年度当初予算に関連経費が計上され、国が率先して財政措置を講じる姿勢を示しました。さらに「放課後児童クラブ運営指針」の改正も初めて行われ、2025年度から施行される予定です。新しい運営指針では、単に数を増やすだけでなく質の向上にも踏み込んだ内容となっており、例えば適正な職員配置やプログラム内容の充実、児童が安心して過ごせる環境整備などについてのガイドラインが強化されます。

政策の方向性: 岸田政権は「こども・子育て支援」を最重要政策の一つと位置付けており、「こども未来戦略」では学童保育を含む放課後児童対策の充実が掲げられました。その中では、これまでの計画で目標としていた152万人分の受け皿整備を可能な限り前倒しで達成し、さらに待機児童ゼロに向けて取り組むことが示されています。政府は2025年度までに「全ての児童が安心安全に過ごせる放課後の居場所を確保する」ことを目標としており、少子化対策・男女共同参画の観点からも学童保育の充実は社会全体の課題と捉えられています。

また、文科省の放課後子ども教室との連携強化、すなわち「放課後の場の一体化」も進む見込みです。既に幾つかの自治体では、放課後児童クラブと子ども教室を同じ校内で一緒に運営したり、スタッフやプログラムを共有したりするモデル事業が試行されています。東京都などでは「一体型放課後対策施設」のモデルケースを示し、専用の連携コーディネーターを配置して両事業を橋渡しする取り組みも始まっています。特に子どもの少ない地域では、放課後児童クラブ単独では成り立たない場合に全児童対象の居場所事業と統合することで効率的に運営するアイデアが注目されています。国としてもこれらの公民連携モデルや自治体間のベストプラクティスを共有し、全国的なレベルで放課後の受け皿を充実させていく方向です。

残る課題: 学童保育の拡大に向けてはいくつかの課題も指摘されています。最大の課題は人材不足です。指導員・支援員のなり手が足りず、採用が困難な地域が少なくありません。特に処遇面(給与や雇用形態)の不安定さから、せっかく研修を受けて資格を取っても長続きしないケースや、より待遇の良い保育所・幼稚園などに人材が流れてしまう現状があります。全国調査では放課後児童支援員の平均年齢が50代以上という結果もあり、このままでは将来的に担い手が高齢化・枯渇してしまう恐れもあります。2024年度より常勤職員(フルタイム職員)配置への改善が進められていますが、現場からはさらなる賃金引き上げや正職員化の拡大など抜本的な処遇改善を求める声が上がっています。

また、自治体間・地域間の格差も課題です。自治体の財政力や子育て支援に対する優先度の違いにより、学童保育に投じられる予算や定員整備のスピードに差があります。待機児童ゼロを既に達成している自治体がある一方で、都心部を中心に何百人もの待機児童がいる自治体も存在します。地方の過疎地域では逆に児童数自体が少なく、統廃合による小規模校の増加により放課後児童クラブを単独で維持できないケースも出ています。そうした地域では、放課後子ども教室との一体運営や、複数の学校合同で一つのクラブを運営する広域連携など、柔軟な対応が必要とされています。今後、財政支援の重点配分や広域での受け入れ調整など、国・自治体の知恵が問われるでしょう。

さらに、民間学童との連携と住み分けも今後のテーマです。民間が提供する高度なプログラムや長時間サービスは公的には容易に真似できない面がありますが、公的クラブも負けずに魅力を高めていく努力が必要です。経済状況に関わらず全ての子どもが多様な体験を得られるよう、前述のような公民連携の取り組みを拡充したり、地域の企業や大学、スポーツ団体などと協力して公設学童でも特色ある活動を提供することが期待されます。例えば地域のスポーツチームが公設学童で出張指導を行ったり、芸術家が工作教室を開くなどの試みは既に各地で行われ始めています。そうした機会を制度的・財政的に後押しする仕組みづくりも課題となるでしょう。

期待と展望: 学童保育市場は、需要の増大に支えられ引き続き拡大が見込まれると同時に、「量から質へ」の転換期を迎えると考えられます。子どもたちが放課後に過ごす時間は年間で約1,600時間にもなると言われます。この貴重な時間をいかに有意義で豊かなものにできるかは、子どもの成長にとって極めて重要です。今後、放課後の場が単なる「居場所」を越えて「学びと体験の場」へと進化していく可能性があります。民間企業のノウハウや地域ボランティアの力を借りて、スポーツ、文化芸術、科学体験、自然体験など多彩なプログラムを展開できれば、子どもたちの興味・関心を広げ、非認知能力(創造力や協調性、自主性等)を育む機会となるでしょう。同時に、子ども自身が「放課後に何をしたいか」を選べる自由度も大切にし、学校や習い事で忙し過ぎる現代の子どもたちにとってほっと一息つける居心地の良い環境であることも忘れてはなりません。

学童保育事業者には、「ただ預かる」のではなく子どもの目線に立った場づくりが求められます。家庭や学校、地域と連携しながら、安全で安心できる「第二の家庭」のような存在として子どもを受け止めつつ、新しい体験や学びにも出会える場を提供する役割です。その実現のために、公的部門の後押しと民間の創意工夫の双方が欠かせません。少子化が進む日本社会において、子ども一人ひとりの育ちを社会全体で支える仕組みとして、学童保育は今後ますます重要性を増すでしょう。量と質の充実に向けた取り組みが実を結び、放課後に子どもたちの笑顔があふれる未来が期待されます。