はじめに:保育料ってどうやって決まるの?

「保育園に子どもを預けたいけど、保育料っていくらかかるんだろう?」
これは多くの保護者が最初に抱える疑問です。

保育園の料金はスーパーのように「一律で○○円です」と決まっているものではありません。家庭の収入や住んでいる地域、子どもの年齢によって大きく変わります。

しかも「3歳からは無償化になる」と聞いて安心していたら、給食費や行事費が別でかかったり、「同じ年収なのに引っ越したら保育料が上がった!」なんてこともあります。

この記事では、これから保育園を探す人や、制度をあまり知らない人でも分かりやすいように、できるだけ専門用語を使わずに、保育料の仕組みをやさしく解説していきます。


保育料の基本の考え方

まず押さえておきたいのは「保育料には全国共通の部分と、自治体ごとに違う部分がある」ということです。

大きく分けると、保育料は次の3つの要素で決まります。

  1. 子どもの年齢
  2. 家庭の収入(世帯の状況)
  3. 住んでいる自治体のルール

ひとつずつ見ていきましょう。


子どもの年齢で変わる保育料

子どもの年齢は保育料に大きく関わります。

特に大きいのは「3歳からの保育料無償化」です。これは国が制度として決めていて、全国どこでも同じルールが適用されます。

ただし、無償化といっても「保育料の本体部分」が無料になるだけで、給食費や教材費は自己負担です。
また、0歳~2歳の子どもは基本的に無償化の対象外なので、保育料が発生します。

つまり、年齢によって支払いが大きく変わる仕組みになっています。


世帯の収入で変わる保育料

もうひとつの大きなポイントは、家庭の収入です。

「高収入の家庭ほど保育料が高く、収入が少ない家庭は安くなる」という仕組みになっています。これは、誰もが安心して保育を利用できるようにするための考え方です。

具体的には、前年の収入をもとに計算される住民税の金額を基準にして、保育料が段階的に決まります。

たとえば、世帯年収が300万円の家庭と800万円の家庭では、同じ園でも保育料にかなり差が出ることがあります。


自治体のルールで変わる保育料

最後に重要なのが「住んでいる自治体のルール」です。

保育料の仕組みは国が大枠を決めていますが、細かい部分は自治体に任されています。
そのため「同じ収入・同じ年齢の子ども」でも、札幌市と東京23区と地方の町村とでは保育料が違う、ということが普通に起こります。

引っ越しをすると「保育料が思ったより高くなった」「逆に安くなった」という声がよく聞かれるのはこのためです。


収入と保育料の関係をもう少し詳しく

では「収入によって保育料が変わる」というのは、どういう仕組みなのでしょうか。


住民税がカギになる

保育料を決めるときの基準は「住民税」です。

住民税は、前年の1月から12月までの収入をもとに計算され、翌年の6月から1年間かかります。つまり、2025年度の保育料は、2023年の収入で決まることになります。

「なんで2年前の収入で?」と不思議に思うかもしれませんが、これは税金の仕組みと年度の関係によるものです。

この住民税の金額をもとに、保育料が「階層表」と呼ばれる一覧に当てはめられ、決まっていきます。


年収と保育料の目安例

「年収いくらだと保育料はどれくらい?」
これは誰もが知りたいところですよね。

ただし注意点として、自治体によって金額が違うため、ここではあくまで「目安」としてイメージをお伝えします。

  • 年収300万円前後 → 保育料は月1~2万円程度
  • 年収500万円前後 → 保育料は月2~3万円程度
  • 年収800万円前後 → 保育料は月3~5万円程度

もちろん子どもの年齢や兄弟の人数によっても変わりますが、大まかにはこんなイメージです。


兄弟姉妹がいる場合の割引

実は、兄弟姉妹がいる場合には「保育料が安くなる仕組み」があります。

たとえば、2人目の子どもの保育料は半額になったり、3人目以降は無料になったりする制度が設けられています。
これも自治体によって内容が違いますが、多くの家庭で助かるポイントです。

ただし、「どの子を1人目とカウントするか」や「学年が違う場合の扱い」などは自治体ごとに細かいルールがあるので、役所で確認するのが安心です。

自治体ごとの違い

なぜ自治体で保育料が違うのか?

保育料は国が制度をつくっていますが、実際に運営するのは市町村です。
そのため「国の基本ルール+自治体の独自ルール」で金額が決まります。

国が決めているのはあくまで「大枠」だけで、細かい計算方法や優遇措置は自治体ごとに違います。

だから、同じ年収・同じ年齢の子どもでも、住んでいる場所が違うと保育料に差が出るのです。


自治体ごとの具体的な違いの例

たとえば、ある都市では「2人目の保育料は半額、3人目は無料」となっていても、別の町では「3人目からしか割引がない」というケースがあります。

また、同じ兄弟でも「上の子が小学校に上がったら割引がなくなる」地域もあれば、「小学生になってもカウントしてくれる」地域もあります。

このあたりは本当にバラバラなので、引っ越しを検討する人は事前に確認することが大切です。


「保育料シミュレーション」の利用をおすすめ

多くの自治体では、公式サイトに「保育料シミュレーション」が用意されています。
年収や子どもの年齢、兄弟の有無を入力するだけで、おおよその保育料が分かるので便利です。

ただし、シミュレーションはあくまで目安です。
最終的な金額は役所が判定して決めるので、細かい部分は必ず確認しておきましょう。


保育料無償化の仕組み

2019年10月から始まった「幼児教育・保育の無償化」は、大きな制度改革でした。


無償化の対象は?

無償化の対象になるのは、主に次のケースです。

  • 3歳~5歳の子ども → 保育料が無料
  • 0歳~2歳の子ども(住民税非課税世帯) → 保育料が無料

ただし、すべての費用が無料になるわけではなく、実費負担の部分は残ります。


無償化でもかかるお金

「無償化だから完全に無料になる」と思っていたのに、実際は支払いが発生して驚いた、という声は多いです。

残る費用の代表例は次のとおりです。

  • 給食費(主食・副食)
  • 延長保育料
  • 行事費(遠足、発表会など)
  • 材料費(工作や教材など)

特に給食費は毎月発生するため、完全に「0円」になるわけではない点に注意が必要です。


保育料以外にかかるお金

保育園に通うと、保育料以外にもいろいろな費用がかかります。


給食費

3歳以上の子どもは、無償化になっても給食費を支払う必要があります。
自治体によって違いますが、だいたい月4,500円~6,000円くらいが相場です。


延長保育料

お迎えが夕方6時を過ぎると「延長保育料」が発生します。
これも園によって料金が異なり、30分ごとに数百円~1,000円程度が目安です。


行事費・教材費

運動会や遠足などの行事費、工作で使う材料費なども保育料とは別にかかります。
こちらは年に数回まとめて請求されることが多いです。


制服やお道具代

私立の認可園などでは、制服やお道具セットを購入する場合があります。
初期費用として数千円~1万円程度かかるケースもあります。


保育料を考えるときのチェックポイント

「保育料って思った以上に複雑…」と感じた方もいるかもしれません。
そこで、保育料を考えるときに大切なチェックポイントをまとめてみます。


1. 自分の収入に基づいた住民税額を確認する

まずは住民税の金額をチェックしましょう。
給与明細や住民税の通知書を見れば確認できます。


2. 自治体の階層表を見る

次に、自分の自治体の保育料階層表を調べます。
役所や公式サイトで公開されているので、それを見れば目安がわかります。


3. 兄弟割引のルールを確認する

兄弟がいる場合は、割引がどう適用されるかを必ずチェックしましょう。


4. 無償化の範囲を理解する

「保育料は無料でも給食費はかかる」など、実際の支出イメージを持っておくことが大事です。


5. 引っ越しを考えている人は要注意

自治体が変わると保育料も変わるので、引っ越し先の制度を必ず確認しておきましょう。


まとめ:保育料を正しく理解して安心の保育園選びを

保育料は「子どもの年齢」「家庭の収入」「自治体のルール」で決まる仕組みです。
3歳からは無償化がありますが、完全に無料になるわけではなく、給食費や延長保育料などは別途かかります。

同じ家庭でも自治体によって金額が変わるので、事前にシミュレーションをしたり役所に相談したりすることが安心です。