福祉サービスを探している保護者の方からよくいただく質問の一つが、「児童発達支援と放課後等デイサービス、両方を利用できる多機能型施設ってどうなの?」というものです。

未就学のお子さんが利用する「児童発達支援」と、小学生以降のお子さんが利用できる「放課後等デイサービス」。この二つを一つの施設で運営しているのが「多機能型施設」です。

この記事では、単体施設と多機能型施設の違い、利用するうえでのメリット・デメリット、施設を選ぶときのポイントなどを、できるだけ分かりやすく、利用者目線で解説していきます。

1. 児童発達支援と放課後等デイサービスの基本

児童発達支援とは?

  • 対象:未就学児(0歳〜6歳)
  • 内容:ことば、運動、生活習慣などの発達支援(いわゆる「療育」)
  • 目的:小学校入学に向けて必要な力を伸ばす

放課後等デイサービスとは?

  • 対象:小学生〜高校生
  • 内容:放課後や長期休暇中の居場所、学習や生活支援、社会性を育てる活動
  • 目的:安心できる居場所の提供と、将来の自立に向けたサポート

2. 単体施設の場合

特徴

児童発達支援のみ、または放課後等デイサービスのみを運営する事業所です。

利用者から見たメリット

  • その年齢層に特化しているため、プログラムが専門的で質が高い
  • 職員も年齢層に合わせた経験を積んでおり安心感がある
  • 集団も同じ年齢層でまとまりやすく、子ども同士が馴染みやすい

デメリット

  • 小学校に上がると施設を変えなければならない
  • 環境の変化に弱い子にとっては、再適応が負担になる
  • 保護者にとっても「また一から探す」必要が出てくる

3. 多機能型施設の場合

特徴

児童発達支援と放課後等デイサービスを一体的に運営。兄弟姉妹が同じ施設を利用するケースも多い。

利用者から見たメリット

  • 未就学から学齢期まで、長く継続して利用できる
  • 環境の変化が少なく、安心して過ごせる
  • 職員が子どもの成長を一貫して見守れる
  • 兄弟姉妹が同じ施設に通いやすく送迎が楽

デメリット

  • 幅広い年齢の子どもが一緒に過ごすため、活動が「誰にでも合う」内容に偏りやすい
  • 個別支援が薄まることがある
  • 職員の専門性が均一でない場合もあり、療育の質に差が出やすい

4. 単体と多機能、利用者から見た違い

安定性 vs 柔軟性

  • 単体:専門性が高く、安定した療育を受けやすい
  • 多機能:一貫性があり、長く通える安心感がある

環境の変化

  • 単体:就学のタイミングで新しい施設に変わる必要がある
  • 多機能:同じ場所で継続できるため、子どもへの負担が少ない

支援の幅

  • 単体:その年齢層に合った支援が中心
  • 多機能:幅広い年齢層を見据えた支援を受けられる

5. 利用者が感じやすいメリット・デメリットまとめ

多機能型のメリット

  • 長期的に通える安心感
  • 成長を一貫して見守れる
  • 保護者の送迎負担が軽い

多機能型のデメリット

  • プログラムが幅広くなる分、特化した支援が弱まる可能性
  • 年齢差による活動の難しさ
  • 職員の経験や専門性によって支援に差が出る

6. 施設を探すときのチェックポイント

  1. 個別支援計画がしっかりしているか
     子どもの特性に応じた目標やプランが明確になっているか。
  2. 活動のバランス
     遊び・学習・生活練習など、内容が偏っていないか。
  3. スタッフの資格や経験
     児童指導員や保育士、療育経験者が在籍しているか。
  4. 雰囲気と安全性
     子どもが安心して過ごせる雰囲気か。送迎や防災対策は十分か。
  5. 保護者へのフィードバック
     日々の記録や成長の様子を伝えてくれるか。

7. 行政書士の視点からのアドバイス

制度上は「どちらも同じサービス」と思われがちですが、実際は施設ごとの方針や職員体制で大きな差が出ます。

特に多機能型は「継続して通いやすい安心感」と「支援の幅広さ」がメリットですが、その分「専門性」や「プログラムの深さ」が十分かどうかを見極める必要があります。

契約前には必ず複数の施設を見学し、子どもの様子や保護者の感覚を確かめてください。

8. 将来を見据えた選択

放課後等デイサービスや児童発達支援は、ただ「今安心して通う場所」ではなく、将来の自立や社会参加につながる大切なステップです。

  • 未就学のうちから専門的な支援を受けたいなら「単体」
  • 小学校以降も見据えて長く同じ場所で過ごさせたいなら「多機能型」

どちらが合うかはお子さんやご家庭の状況によって変わります。


まとめ

児童発達支援と放課後等デイサービスには、それぞれの強みがあります。
多機能型は一貫性があり、保護者にとっても送迎や手続きがシンプルというメリットがありますが、単体施設の「専門性の高さ」に比べると幅広さゆえの難しさもあります。

利用者としては「子どもにとって何が一番安心か」「今と将来をどうつなげたいか」を考えながら選ぶことが大切です。

出典・参考

  • 児童福祉法
  • 厚生労働省「障害児通所支援の概要」
  • こども家庭庁「障害児支援に関する制度」
  • 各自治体 障害福祉課案内ページ