保育園・認定こども園・小規模保育事業所などの施設運営・財務担当者のみなさま、毎年の「処遇改善等加算」の手続きやお給料への配分、本当にお疲れ様です!
年度末や実績報告の時期になると、こんなお悩みをよく耳にします。
- 「計算してみたら、もらった加算額より職員に配った給料の方が少なくて、残額が発生してしまった…!」
- 「あまったお金はどう精算すればいいの?返還?それとも年度末ボーナスで配っていいの?」
- 「そもそも『区分3』の仕組みや配分ルールが難しすぎてよくわからない…」
そこで本記事では、「処遇改善加算があまった時の正しい対処法」と、「区分3(旧加算Ⅱ)の簡単な噛み砕き解説」をセットで分かりやすく、かつ実務でそのまま使えるレベルで詳しく解説します!
1. 処遇改善加算の「加算があまる」とはどういう状態?
1-1. 残額が発生する仕組み
処遇改善等加算(区分2・区分3など)は、国や自治体から施設に対して支給される給付金(加算)です。
制度のルール上、「国から支給された加算額(加算実績額)」以上の金額を、職員の賃金改善(+それに伴う社会保険料などの事業主負担分)として全額配分・支給しなければならないと決められています。
しかし、次のような理由から「想定していた配分額」よりも「実際に受け取った加算額」の方が大きくなり、差額(あまり)が生じることがあります。
- 年度途中で職員が退職・休職した(配る相手が減った)
- 在籍児童数が年度途中で増えた(施設に入る加算額が増えた)
- 人事院勧告(人勧)による公定価格の増額改定が年度末にあった
1-2. 「あまったから園の利益にしていい」は絶対NG!
処遇改善等加算で受け取ったお金は、全額を職員の給与や手当、一時金、法定福利費(社会保険料等の事業主負担分)として還元しなければなりません。
あまったお金を「施設の利益(事業費や手元資金)」としてプールすることは固く禁止されています。
2. 加算があまった(支払いきれなかった)時の正しい対処法
年度末の実績報告計算で「加算額 > 賃金改善額」となって残額が出ていることが発覚した場合、事業所が取るべき対処法は主に3パターンあります。
対処法①:年度末(3月)や年度内に「一時金(ボーナス・追給)」で全額配分する
一番シンプルで一般的な対処法です。 算出した残額分を、年度末の賞与や一時金(「処遇改善追給手当」など)として職員に一括支給し、当年度の改善実績総額に組み込みます。
ポイント:社会保険料の会社負担分(法定福利費)もカウントOK! 一時金を支給したことで増えた会社側の社会保険料・労働保険料の負担増分(事業主負担分)も、賃金改善の実績額に含めて計算することができます。
対処法②:【重要】年度内に支払いが間に合わない場合は「翌年度に繰り越して支払う」
「年度末の給与計算が終わってから残額に気づいた」「補正予算による増額が年度ギリギリで確定した」などの理由で、3月末までに職員へ支給が間に合わないケースがあります。
この場合、「加算当年度の翌年度において加算当年度に支払うべき残額」として整理し、翌年度内に速やかに一時金等で職員へ支給することが認められています。
【繰越精算(翌年度支給)の手続きルール】
- 実績報告書への記載: 当年度の実績報告書において、残額がある旨とその金額を記載して自治体へ提出します。
- 翌年度内の支払い: 翌年度の賃金改善期間中に、一時金等として対象職員へ速やかに追給します。
- 翌年度の実績報告で確認: 自治体の監査や翌年度の実績報告書において、繰り越した残額がしっかり支払われたかが厳しく確認されます。
対処法③:次年度からは「毎月の決まった手当(月額手当)」を引き上げる
毎年のように大幅な残額が出てしまい、年度末の一時金だけで調整するのが大変な場合は、配分計画そのものを見直しましょう。
処遇改善等加算では、「区分2と区分3を合わせた改善額の1/2以上は、基本給や毎月決まって支払われる手当によって改善すること」というルールがあります。 毎月の手当(処遇改善手当)の月額設定を少し引き上げることで、年度末に残額があまるリスクを減らすことができます。
3. 「区分3がわからない!」を世界一わかりやすく解説
令和6・7年度以降の制度改定により、処遇改善等加算は「区分1・区分2・区分3」へ再編・一本化されました。 その中でも特に「ルールが複雑」「誰にいくら配ればいいの?」と現場を悩ませているのが「区分3(質の向上分)」(※旧加算Ⅱ)です。
ここからは、区分3の全体像を専門用語を使わずに噛み砕いて解説します!
3-1. 区分3を一言で言うと?
区分3とは、「中堅職員やリーダーに役職・役割をつけて、キャリアアップ手当を支給するための仕組み」です。 若手から中堅へのキャリアパス(ステップアップ)の道筋を作り、園全体の保育の質を高めることを目的としています。
3-2. 区分3の「2つのグループ」と配分金額の基本ルール
区分3では、役職や経験年数に応じて職員を以下の2つのグループに分けて手当を支給します。
【区分3のイメージピラミッド】
- [ 園長 ] ➔ 区分3は支給不可!
- [ 主任・副園長 ] ➔ 賃金バランス調整で配分OK
======================================【区分3-①】副主任保育士・専門リーダー等 ➔ 月額 4万円以内
【区分3-②】職務分野別リーダー・若手リーダー等 ➔ 原則 月額 5,000円 (※5千円〜4万円未満も可)
- [ 一般保育士・スタッフ ]
- ①【区分3-①】副主任保育士・専門リーダー等
- もらえる手当の額: 月額 4万円以内
- 対象となる人: 経験年数概ね7年以上で、指定された研修(マネジメント研修など)を修了している(または修了見込みの)リーダー層。
- ②【区分3-②】職務分野別リーダー・若手リーダー等
- もらえる手当の額: 原則 月額 5,000円 ※園の判断で「5千円 〜 4万円未満」の範囲で自由に引き上げて支給することも可能です。
- 対象となる人: 経験年数概ね3年以上で、担当分野(乳児保育、食育、アレルギー、保護者支援など)の研修を1分野以上修了している(または修了見込みの)若手・中堅層。
3-3. 勘違いしやすい「区分3」の4大重要ルール!
現場でよくある疑問や勘違いを、FAQなどの公式通知に基づいてまとめました。
- ルール①:研修がまだ終わっていなくても「修了見込み」なら配分してOK! 「今年度にキャリアアップ研修を受ける予定だけど、まだ修了証がない…」という場合でも、年度内に研修を受ける計画があり、本人に周知されていれば「研修修了見込み」として手当を支給して大丈夫です。
- ルール②:主任保育士等(園長以外の管理職)にも配分できる! 副主任保育士に月4万円の手当を配った結果、「副主任の方が主任よりも給料が高くなってしまった…!」という逆転現象(賃金ギャップ)が起きることがあります。この場合、賃金バランスを整えるために主任保育士や副園長、教頭に対しても区分3の手当(5千円〜4万円未満など)を配分することができます。(※この調整で手当をもらう主任保育士等には、研修修了要件は課されません。)
- ルール③:【注意】「園長(施設長)」には絶対に配分できない! 区分3のお金を園長・施設長に配分することはルール上固く禁止されています(※区分2は条件付きで配分可能ですが、区分3は不可)。
- ルール④:保育士以外(事務員・調理員・パート)でも対象になる! 「副主任保育士」という名称が入っていますが、事務職員、調理員、栄養士、バス運転手であっても、またパート・非常勤職員であっても、園内でリーダー的な職務命令を受け、研修要件等を満たしていれば区分3の手当を配分することができます。
4. 実績報告で焦らないための「最終チェックリスト」
年度末の実績報告書(別紙様式6など)を作成する際は、以下の3つのポイントを必ずチェックしましょう!
- [ ] 【チェック1】残額がゼロ、または正しく精算されているか?
- 加算受給額 ≦ 賃金改善額(+法定福利費事業主負担分)になっているか?
- 残額がある場合、3月一時金で支払うか、翌年度への繰越処理手続きを行ったか?
- [ ] 【チェック2】毎月手当の比率が「1/2以上」になっているか?
- 区分2と区分3を合わせた改善額のうち、半分以上が基本給や毎月手当で支給されているか?
- [ ] 【チェック3】ベースの給与水準を引き下げていないか?(賃金水準維持要件)
- 定期昇給分や人件費改定分(人勧分)を正しく控除した上で、基準年度の給与水準が維持されているか?
5. まとめ:正しく理解してスムーズな処遇改善運用を!
処遇改善等加算は、ルールが複雑で計算も大変ですが、仕組みさえ理解してしまえば怖くありません。
- 残額が生じたら ➔ 3月の一時金追給か、翌年度への繰越精算で全額職員へ還元する
- 区分3(質の向上分)は ➔ 中堅・リーダー(副主任=月4万以内/リーダー=月5千円〜)へのキャリアアップ手当
- 研修修了見込みや主任へのバランス配分など、柔軟なルールを活用する
正しい知識を身につけて、職員みんなが納得できる適正な処遇改善と、スムーズな実績報告を目指しましょう!