こども福祉専門の行政書士として、こども性暴力防止法(日本版DBS)に関する実務Q&A連載をお届けしております。
前回の記事では、民間教育事業の4要件や、義務対象と認定対象の基本的な違いについて解説いたしました。今回は「追加編」として、実務の現場で特に判断に迷いやすいグレーゾーンや、細かな契約形態による違いについて、ガイドラインや公式見解に基づいた20問(Q21からQ40)を一問一答形式で解説いたします。

目次
  1. 第1章:事業の「場所」と「主体」による対象区分の違い
    1. Q21. 小学校の空き教室を使って、教育委員会の事業として「日本語教室」を実施している場合、この事業は義務対象と認定対象のどちらですか?
    2. Q22. 市の教育委員会が、図書館での「読み聞かせ」と科学館での「子供向け教室」の両方を実施しています。これらをまとめて一つの「民間教育事業」として認定申請できますか?
    3. Q23. 学校の校内で、放課後に民間の「予備校事業者」が講義を行う場合、予備校事業者は自ら認定を受ける必要がありますか?
    4. Q24. 放課後児童クラブ(放課後児童健全育成事業)は、児童福祉法に基づく事業ですが義務対象になるのでしょうか?
    5. Q25. 「放課後等デイサービス」や「放課後子供教室事業」は、義務対象ですか、それとも認定対象ですか?
    6. Q26. 児童等を専ら対象としていない「自動車教習所」は、認定対象になりますか?
  2. 第2章:業務の「3要件」と「民間教育事業の人数要件」の細かな解釈
    1. Q27. 指導者1人に対してこどもが複数人いるグループ指導の場合、一対一ではないので「閉鎖性」を満たさないと判断してよいですか?
    2. Q28. 民間教育事業が認定を受けるための「3人以上」要件について、組織全体で3人以上職員がいても、実際に教える人が2人の場合は要件を満たしますか?職種名が講師以外も人数に含まれますか?
    3. Q29. 民間教育事業を複数の教室(事業所)で展開している場合、各教室に「3人以上」配置されている必要がありますか?
    4. Q30. 当社には3人の指導者がいますが、シフト制のため、現場には常に1から2人しかいない場合でも「3人以上」の要件を満たしますか?
    5. Q31. 図書館の読み聞かせ事業等で認定を受ける場合、常に複数名で実施して閉鎖性(一対一の状況)がない環境にすれば、犯罪事実確認をしなくてよいことになりますか?
  3. 第3章:実習生・ボランティアの対象判定とプライバシー保護
    1. Q32. 大学のサークル活動として、月に2回、障害児施設で定期的に交流会を開催しこどもの支援を行っています。このようなボランティアも対象になりますか?
    2. Q33. 教育実習等を受け入れるにあたり、実習生が犯罪事実確認の対象となることを事前にどのように周知し同意を得ておけばよいですか?ウェブのアンケート機能等を用いてもよいですか?
    3. Q34. 実習先での犯罪事実確認の結果、実習生に「性犯罪前科」があることが分かりました。受け入れ困難であることを大学等にどう伝えればよいですか?
  4. 第4章:再任用・再雇用のルールと、組織内の連携
    1. Q35. 私立の通信制高校で、本校がある都道府県とは別の県に「サテライト施設」を設置しています。現職者の犯罪事実確認はどちらの県のスケジュールに合わせますか?
    2. Q36. 1年間の任期で講師を任用し、任期終了後に再任用する場合、その都度犯罪事実確認が必要になりますか?
    3. Q37. 当初は再任用の予定がなかった従事者を、期間を空けて再度任用することになりました。この場合改めて犯罪事実確認が必要ですか?
    4. Q38. 学校が独自の採用を行っており、教育委員会が採用を把握していなかったために確認手続きが直前になってしまった場合、例外措置である「いとま特例」は適用されますか?
    5. Q39. 「こまもろうマーク」には2種類あるようですが、誰がどのマークを使用できるのでしょうか?
  5. 第1回(追加編)まとめと次回予告

第1章:事業の「場所」と「主体」による対象区分の違い

まずは、事業を実施している場所や、誰が主体となって事業を行っているかによる、義務・認定対象の違いについて確認します。

Q21. 小学校の空き教室を使って、教育委員会の事業として「日本語教室」を実施している場合、この事業は義務対象と認定対象のどちらですか?

A. 「認定対象」に該当し得ます。
小学校の教室を使用していたとしても、それが小学校の正規の授業等としてではなく、別に実施している事業である場合には、学校の義務対象事業には該当しません。民間教育事業など認定対象事業の要件を満たすものであれば、任意で認定を受ける対象となります。

Q22. 市の教育委員会が、図書館での「読み聞かせ」と科学館での「子供向け教室」の両方を実施しています。これらをまとめて一つの「民間教育事業」として認定申請できますか?

A. できません。
認定等の申請は「事業ごと」に行う必要があります。同一の事業者が複数の異なる事業を行っているからといって、まとめて一つの民間教育事業として申請することはできず、それぞれ別に申請する必要があります。ただし、一つの事業(例:図書館の読み聞かせ)が市内の複数の図書館(複数の事業所)で実施されている場合には、まとめて1つの事業として申請することが可能です。

Q23. 学校の校内で、放課後に民間の「予備校事業者」が講義を行う場合、予備校事業者は自ら認定を受ける必要がありますか?

A. 実施の形態によって異なります。
① 学校が予備校事業者に委託などを行い、「学校の教育事業の一部」として実施している場合は、学校の義務対象事業の一部とみなされます。この場合、予備校の講師等に対する犯罪事実確認は学校側が行う義務を負います。
② 単に学校が施設を貸しているだけで、予備校事業者が「独自の事業」として行っている場合は、その予備校事業者が自ら民間教育保育等事業者として認定申請を行うことになります(認定取得は任意です)。

Q24. 放課後児童クラブ(放課後児童健全育成事業)は、児童福祉法に基づく事業ですが義務対象になるのでしょうか?

A. 義務対象には該当しません。
放課後児童健全育成事業は、児童福祉法に基づく事業ではありますが、こども性暴力防止法においては学校設置者等(義務対象)には含まれず、民間教育保育等事業者(認定対象)として整理されています。認定を受けるかどうかは事業者の任意となります。

Q25. 「放課後等デイサービス」や「放課後子供教室事業」は、義務対象ですか、それとも認定対象ですか?

A. 事業の形態によって異なります。
児童福祉法に基づく「指定障害児通所支援事業(放課後等デイサービスなど)」は義務対象となりますが、指定を受けていない基準該当サービス等の場合は認定対象となります。また、地域学校協働活動として行われている「放課後子供教室事業」については、認定対象事業となります。

Q26. 児童等を専ら対象としていない「自動車教習所」は、認定対象になりますか?

A. 児童等(高校生など)を対象としている場合は、認定対象となり得ます。
都道府県の認可を受けている自動車教習所は「各種学校」に当たりますが、児童等を専ら対象としていない場合には民間教育事業の要件(6ヶ月以上、対面、場所、3人以上)を満たす場合に限り、認定対象事業となります。

第2章:業務の「3要件」と「民間教育事業の人数要件」の細かな解釈

ここでは、対象業務となる「支配性・継続性・閉鎖性」の3要件や、民間教育事業の認定要件である「3人以上」の考え方を深掘りします。

Q27. 指導者1人に対してこどもが複数人いるグループ指導の場合、一対一ではないので「閉鎖性」を満たさないと判断してよいですか?

A. いいえ、閉鎖性を満たし対象となり得ます。
ガイドラインでは、閉鎖性の要件について「他の職員や保護者等が同席しないなど、第三者の目に触れない状況で児童等と接する機会が生じ得る場合(従事者一人に対して児童等が複数の場合を含む)」と明記されています。一対一でなくとも、現場にいる大人がその従事者一人しかいない状況であれば、閉鎖性があると判断されます。

Q28. 民間教育事業が認定を受けるための「3人以上」要件について、組織全体で3人以上職員がいても、実際に教える人が2人の場合は要件を満たしますか?職種名が講師以外も人数に含まれますか?

A. 技芸又は知識の教授を行う者が3人未満の場合は、民間教育事業の要件を満たさないため認定を受けることはできません。
ただし、教授する内容は問われないため、教える役割を担っているのであれば、職種名が講師や指導員でなくともその人数に含めることができます。

Q29. 民間教育事業を複数の教室(事業所)で展開している場合、各教室に「3人以上」配置されている必要がありますか?

A. すべての事業所に3人以上配置されている必要はありません。
民間教育事業の要件は事業全体として満たすべきものであるため、法人(事業者)全体で対象となる指導者が3人以上いれば要件を満たします。なお、認定は事業ごとに受けるものであり、同一事業について一部の事業所のみ認定等を受けることはできません。

Q30. 当社には3人の指導者がいますが、シフト制のため、現場には常に1から2人しかいない場合でも「3人以上」の要件を満たしますか?

A. はい、要件を満たします。
3人の指導者が常に現場に常駐している必要はないため、事業に従事する指導者が全体で3人以上いれば、民間教育事業の要件に該当します。

Q31. 図書館の読み聞かせ事業等で認定を受ける場合、常に複数名で実施して閉鎖性(一対一の状況)がない環境にすれば、犯罪事実確認をしなくてよいことになりますか?

A. いいえ、そのような事態は想定されていません。
民間教育事業の認定要件として「技芸又は知識の教授を行う者」が3人以上いることが求められており、この者たちは犯罪事実確認の対象となる教育保育等従事者に当たります。したがって、認定対象事業に全く犯罪事実確認の対象者がいないという運用は認められません。

第3章:実習生・ボランティアの対象判定とプライバシー保護

ここからは、実習生やボランティア等の対象判定と、その確認に伴う個人情報の取り扱いルールについて解説します。

Q32. 大学のサークル活動として、月に2回、障害児施設で定期的に交流会を開催しこどもの支援を行っています。このようなボランティアも対象になりますか?

A. 対象になり得ます。
月に2回という定期的である点から継続性を、支援やケアを通じてこどもと一定の接触があるため支配性を、そして第三者の同席がない場合が想定されれば閉鎖性を満たすとされ、定期的な活動を行うボランティアは犯罪事実確認の対象となります(単発のイベント手伝い等であれば対象外です)。

Q33. 教育実習等を受け入れるにあたり、実習生が犯罪事実確認の対象となることを事前にどのように周知し同意を得ておけばよいですか?ウェブのアンケート機能等を用いてもよいですか?

A. こども家庭庁等の指針では、実習前に大学等と学生の間で同意書や誓約書を取得することが推奨されています。「法の施行日以降、実習先が犯罪事実確認を行うこと」「性犯罪歴がある場合は実習を行えないこと」などについて、あらかじめ同意を得ておきます。
誓約書や同意書の提出方法については各大学等において適切に判断すべきものとされており、電子的なアンケート機能等を用いた取得も認められています。

Q34. 実習先での犯罪事実確認の結果、実習生に「性犯罪前科」があることが分かりました。受け入れ困難であることを大学等にどう伝えればよいですか?

A. 実習先の事業者は、大学等に対し「児童対象性暴力等のおそれがあるため、当該学生にこどもと接する実習を行わせることができない」という結論のみを伝えます。
ここで最も注意すべきは、犯罪事実確認の結果そのもの(「性犯罪前科があった」という情報)を大学等に伝えることは、法に基づく「第三者提供の禁止(漏えい)」に該当し罰則の対象となる点です。伝達を受けた大学側が、実習生本人の同意を得て直接面談等を行い、性犯罪歴を確認することになります。

第4章:再任用・再雇用のルールと、組織内の連携

最後に、有期雇用者の再任用ルールや、現職者の申請スケジュール、組織内での連携不足によるリスクについて解説します。

Q35. 私立の通信制高校で、本校がある都道府県とは別の県に「サテライト施設」を設置しています。現職者の犯罪事実確認はどちらの県のスケジュールに合わせますか?

A. 私立の通信制高校については、サテライト施設を含むすべての教員等の交付申請を、本校が所在する都道府県の申請対象期間(国から都道府県ごとに割り当てられた期間)に行うこととされています。施設が所在する県ごとに分けて申請する必要はありません。

Q36. 1年間の任期で講師を任用し、任期終了後に再任用する場合、その都度犯罪事実確認が必要になりますか?

A. あらかじめ継続が予定されている場合は、改めての確認は不要です。
雇用期間の終了後も対象業務に従事し続けることが客観的な書面であらかじめ取り決められている場合(会計年度任用職員などで再度任用される場合など)は、離職に該当しないため再任用の際に改めて犯罪事実確認を行う必要はありません。

Q37. 当初は再任用の予定がなかった従事者を、期間を空けて再度任用することになりました。この場合改めて犯罪事実確認が必要ですか?

A. 退職から「30日以内」であれば、新たな確認は不要です。
退職した日から起算して30日が経過する日までの間で、かつ事業者が犯罪事実確認記録等の廃棄・消去を行う前に同一事業者に再就職した場合は、元々予定されていた次の確認時期(最大5年後)まで新たな犯罪事実確認は不要とされています。

Q38. 学校が独自の採用を行っており、教育委員会が採用を把握していなかったために確認手続きが直前になってしまった場合、例外措置である「いとま特例」は適用されますか?

A. 適用されません。
学校からの報告がなく、教育委員会が採用を把握していなかったという事情は事業者側の連携不足であり、いとま特例が認められる「やむを得ない事情」には該当しません。学校の校長等にシステムの交付申請権限を付与するなどして、法定期限までに適切に確認を行う体制を整えておくことが重要です。

Q39. 「こまもろうマーク」には2種類あるようですが、誰がどのマークを使用できるのでしょうか?

A. こまもろうマークには「法定事業者マーク」と「認定事業者マーク」の2種類があります。
法定事業者マークは、学校や認可保育所などの義務対象事業者が使用できます。認定事業者マークは、民間事業者が任意で認定申請を行い、認定を受けた認定対象事業者が使用できます。これらをウェブサイト等に掲示し、こどもの安全確保に国と同水準で取り組んでいることをアピールすることが可能です。

第1回(追加編)まとめと次回予告

今回は、民間教育事業の3人以上要件の細かな解釈や、再雇用・再任用時のルール、そして組織内の連携不足が特例適用につながらないという実務的な注意点など、判断に迷いやすいグレーゾーンを中心に解説しました。
特に複数施設を運営する法人や、教育委員会と学校のような重層的な組織においては、採用情報の伝達の遅れが犯罪事実確認義務違反に直結するリスクがあります。施行前に、社内(組織内)の申請フローと権限の委譲についてしっかりとルール化しておくことが求められます。
以上で「第1回:制度の対象範囲と義務・任意の境界線」に関するテーマを終了し、次回からは【安全確保措置編】として、日頃の防止策と「不適切な行為」への対応に関するQ&Aをお届けします。どうぞご期待ください。