新年度となる令和8年度(2026年度)がスタートし、公定価格の改定に伴って新たに「保育ICT推進加算」が創設されました。これまで国が行ってきたICTシステム導入時の「初期費用に対する補助金」とは異なり、日々の業務にICTを活用している施設に対し、毎月の運営費として恒久的に加算が行われる非常に重要な制度変更です。

本日は、この新しい加算の計算方法や算定に必要な要件、そして今年度限定の実務上の特例措置について、専門家の視点から分かりやすく解説いたします。

保育ICT推進加算が創設された背景

こども家庭庁は、保育現場や自治体職員、そして保護者の負担を軽減する「保育DX」を強力に推進しています。

本加算は、その保育DX推進の一環として位置づけられています。保育士の皆様が書類作成などの事務作業に追われることなく、子どもと向き合う時間の確保や保育の質の向上に注力できる環境を実現することが最大の目的です。積極的にICTを活用し、業務負担の軽減に取り組む施設が公定価格上で正当に評価される仕組みとなりました。

加算額の計算構造とシミュレーション

本加算は、施設に毎月定額が振り込まれるわけではありません。対象となる施設の類型ごとに「ベース額」が定められており、それを利用児童数に応じた単価に変換する計算方式がとられます。

施設類型ごとのベース額

  • 幼稚園・保育所・認定こども園:年額30万円
  • 小規模保育事業などの地域型保育事業:年額18万円

具体的な計算方法

定められたベース額を「3月初日の利用子ども数」で除算し、子ども一人当たりの単価に上乗せして加算されます。

例:定員および3月初日の利用子ども数が60名の保育所の場合 30万円 ÷ 60名 = 5,000円

この算出された金額(5,000円)が、子ども一人あたりの基本分単価に加算されることで給付額が決定します。

算定のための3つの必須要件

情報通信機器やタブレットを施設内に設置しただけでは、要件を満たしたとは認められません。以下の3つの要件を満たし、実際の業務に活用していることが求められます。

1. 4つの機能を持つICTの活用

施設の日々の業務において、4つの主要な機能を持つICTシステムを活用していることが第一の要件です。これは、施設が主体的にICTを活用して業務負担軽減や保育の質向上に取り組んでいるという客観的な実績を示すための重要な基準となります。

2. 保活情報連携基盤の利用

保護者の保活手続きをワンストップ化するため、国が構築するシステムを利用することが第二の要件です。施設側には、プラットフォーム上での施設情報の登録、空き枠情報の定期的な登録、保護者からの見学予約申請の承認などのデータ入力操作が求められます。これにより、電話対応をはじめとする事務負担の削減が期待されています。

3. 保育業務施設管理プラットフォームの利用

給付業務や監査業務をワンスオンリー化するシステムの利用が第三の要件です。施設型給付費や延長保育事業の申請・報告、監査調書の入力などをプラットフォーム上で行います。公定価格の自動計算やエラーチェック機能が実装されるため、行政書士の目線からも、自治体との紙媒体による煩雑なやり取りが大幅に軽減される画期的な仕組みと言えます。

民間システムとのデータ連携構造

すでに民間の保育ICTシステムを導入している施設様も多いかと思います。国の構想では、民間システムに入力された職員情報や登降園データは、API連携等を通じて国のプラットフォームに送信される設計となっています。

集約されたデータは審査や承認を経て、自治体のシステムや情報公表サイト「ここdeサーチ」へ自動連携されます。複数のシステムに同じ情報を二重、三重に入力する手間を省くための構造です。

令和8年度における特例措置と自治体の動向

今年度から算定を目指す施設様にとって最も重要なのが、この特例措置の存在です。国のシステムは段階的に稼働するため、令和8年度の加算算定においては実務上の経過措置が設けられています。

アカウント発行と将来の活用確約

令和8年度については、以下の条件を満たせば加算要件を満たしていると取り扱われます。

  • 施設においてシステムのアカウント発行を受けていること
  • 令和9年度以降に両システムを活用する予定であることを確約すること

すべてのシステム機能が完全に稼働していなくても、導入手続きを完了させ、将来的な活用意思を示すことで初年度から加算の算定が可能です。なお、令和9年度以降の具体的な活用要件については、今年(令和8年)の6月を目途に国から詳細な基準が示される予定です。

自治体のシステム活用状況への対応

本加算は、施設が所在する自治体がプラットフォームを活用していることが大前提となります。ただし、自治体側での利用申請やテスト環境の構築が進行中であっても、施設側で令和9年度以降の活用を確約できる状態であれば、適用対象と判断される運用方針が示されています。

今後施設が行うべき対応事項

スムーズに加算を算定し、行政手続きの不備を防ぐために、施設管理者の皆様は以下の点に早急に対応することをお勧めいたします。

  • 導入済みICTシステムの仕様確認 現在利用中の民間システムが、国の求める要件に該当する機能を網羅しているか確認してください。
  • システムベンダーの対応状況のヒアリング 利用中のシステムベンダーが、国のプラットフォームに対するデータ連携機能(API改修など)をどのように予定しているか、対応状況を確認する体制を整えましょう。
  • 自治体からの通知確認と利用申請手続き 各自治体から、システム利用開始に向けた施設向けの説明会や利用申請の案内が順次実施されます。利用申請のスケジュールは自治体ごとに異なるため、所在する市区町村の動向を正確に把握し、指定された受付期間内に手続きを漏れなく完了させることが必須となります。

新しい制度の開始年度は、手続きのスケジュールや自治体ごとの運用が流動的になりがちです。最新の行政情報をこまめにチェックし、要件を取りこぼさないよう準備を進めていきましょう。