こども福祉専門の行政書士として、2026年12月施行の「こども性暴力防止法(日本版DBS)」に関する実務Q&A連載をスタートいたします。
第1回目のテーマは、「制度の対象範囲と義務・任意の境界線」です。
本制度では、事業者を法律上の義務を負う「学校設置者等(義務対象)」と、任意で国の認定を受けることができる「民間教育保育等事業者(認定対象)」の2つに大きく分けています。
自社の事業がどちらに当てはまるのか、あるいは対象外なのか。また、複雑な契約形態や様々な職種の従業員が対象になるのかどうか。事業者の皆様から最も多く寄せられる入り口の疑問について、こども家庭庁のガイドラインや公式資料を基に、全20問の一問一答形式で詳しく解説していきます。
参考:こども家庭庁 こども性暴力防止法(日本版DBS)について
第1章:制度の基本となる義務対象と認定対象(任意)の区分
まずは、法律による義務を負う事業者と、任意で制度に参加できる民間事業者の違いについて整理します。
Q1. 義務対象と認定対象(任意)の違いは何ですか?児童館はどちらですか?
A.
義務対象となるのは、幼稚園、小学校、中学校、高等学校などの「学校」や、認可保育所、認定こども園など、法令に基づく認可等を受けて児童に教育や保育を提供する事業者です。児童館も児童福祉施設に該当するため、義務対象となります。
一方、認定対象となるのは、学習塾やスポーツクラブ、認可外保育施設など、法令に範囲が定められていない事業や、届出等で行うことができる事業です。これらの民間事業者は、国の認定を受けること(任意)で本制度の対象となり、犯罪事実確認システムを利用できるようになります。
Q2. 義務対象事業(例:認可保育所)と認定対象事業(例:一時預かり)を同じ法人で運営しています。それぞれ手続きが必要ですか?
A.
義務対象事業を運営している事業者が、その事業に付随する認定対象事業を一体的(事業運営や人事管理が一体的に行われている等)に行っている場合は、認定対象事業の従事者についても義務対象事業の教員等とまとめて整理することが可能です。そのため、必ずしも認定対象事業として別途認定を取得する必要はありません。
Q3. 基準該当の障害児通所支援事業や、共生型障害福祉サービスの特例を受けている事業は義務対象ですか?
A.
基準該当通所支援を行う事業者は、児童福祉法に基づく指定を受けていないため、義務対象(学校設置者等)には該当せず、認定対象事業者となります。
一方、共生型障害福祉サービスの特例を受けて障害児通所支援を実施している場合は、指定障害児通所支援事業に該当するため、義務対象となります。
第2章:民間事業者が認定を受けるための「4要件」と具体例
学習塾や習い事などの民間事業者が認定を受けるためには、定められた4つの要件をすべてクリアする必要があります。
Q4. 民間教育事業が認定を受けるための「4つの要件」とは何ですか?
A.
民間教育事業として認定の対象となるには、以下の4つの要件をすべて満たす必要があります。
| 要件の名称 | 内容 |
|---|---|
| 1. 修業期間要件 | 技芸や知識を習得するための標準的な修業期間が6か月以上であること |
| 2. 对面要件 | 児童に対して対面による指導を行うものであること |
| 3. 場所要件 | 事業者が用意する場所(事業所等)で指導を行うこと(児童の自宅は除く) |
| 4. 人数要件 | 技芸や知識の教授を行う者が3人以上であること(雇用形態は問わない) |
Q5. 4要件の「修業期間が6か月以上」とは、具体的にどのような場合ですか?
A.
単に事業そのものを6か月以上続けているというだけではなく、以下の3点を満たす必要があります。
・6か月以上の期間にわたって事業を実施している。
・その期間に複数回、児童に対して指導を行っている。
・同一の児童が複数回参加可能であること。
したがって、1回限りのイベントや、夏休みのみの短期単発プログラムなどは対象外となります。
Q6. 完全オンラインの学習塾やフリースクールは対象になりますか?
A.
オンラインのみで行われる事業は対面要件を満たさないため、認定の対象外となります。
ただし、オンライン指導を基本としつつも、児童の要望等に応じて対面で(児童の自宅以外の場所で)授業等を行う機会がある場合には、要件を満たし対象となり得ます。
Q7. ベビーシッターや家庭教師は対象になりますか?
A.
個人(1人)のみで事業を行うベビーシッターや家庭教師は、人数要件(指導者が3人以上)を満たさないため対象外です。また、家庭教師のように児童の自宅のみで教える場合は場所要件も満たしません。
ただし、ベビーシッターのマッチングサイト運営者が認可外保育施設として届出を行い、個々のベビーシッターと委託契約を結ぶ形で保育の提供事業者となる場合は、運営者が認定を受けることができ、契約するベビーシッターは確認の対象となり得ます。
Q8. ボランティアで運営している「こども食堂」での学習支援やプレイパークは対象になりますか?
A.
対象になり得ます。指導を行う者の人数要件(3人以上)には、雇用契約の有無や有償・無償は問われないため、ボランティアスタッフも含めることができます。こども食堂やプレイパークであっても、継続的な学習支援などを行い、民間教育事業の4要件を満たす場合は、任意で認定申請を行うことが可能です。
Q9. 親子で参加する体験教室や、大人とこどもが混在する事業は対象になりますか?
A.
児童に対して技芸や知識を教授することを目的としている(明示されている)場合は、対象になり得ます。親子向けの事業も、民間教育事業の4要件を満たせば認定対象となります。
ただし、大人のみを対象とした事業に、児童が例外的に混ざって参加しているような場合は対象外となります。
Q10. 地方自治体から「少年自然の家」を受託運営している場合や、自動車教習所は制度の対象になりますか?
A.
少年自然の家自体は義務対象ではありませんが、実施している事業が民間教育事業の4要件を満たせば認定対象となり得ます。
自動車教習所についても、高校生などの児童等を対象としている場合は認定対象となり得ます。都道府県の認可を受けている場合は各種学校として、そうでない場合は民間教育事業として認定の対象になります。
第3章:外部委託・実習生・フランチャイズの複雑なケース
自社の直接雇用ではない人員が現場に入る場合、誰が責任をもって犯罪事実確認を行うのかが重要なポイントになります。
Q11. フランチャイズ(FC)展開している学習塾は、本部が一括して認定を受けられますか?
A.
受けられません。FC事業の場合、親元の事業者(本部)と加盟店(個人事業主等)は経営主体が異なるため、それぞれ別個に認定申請を行う必要があります。
もし、特定のFC加盟店において指導を行う者が3人未満である場合は、その加盟店は人数要件を満たさないため、認定を受けることはできません。
Q12. 学校の授業で水泳や英会話を外部事業者に委託している場合、指導者の犯罪事実確認は誰が行いますか?
A.
学校の事業(カリキュラムの一部等)として実施する場合は、指導者が外部の委託先や派遣労働者であっても、学校側(委託元・派遣先)が犯罪事実確認を行う義務を負います。
一方、学校の施設を貸しているだけで、外部の事業者が学校の事業とは全く別に英会話教室等を提供している場合は、その事業者が認定を受けて自ら確認を行う必要があります。
Q13. 私立学校のスクールバスの運行を保護者組織に委託している場合、運転手の犯罪事実確認は誰が行いますか?
A.
バスは学校保有で保護者組織に委託費を払って運行しているようなケースにおいて、学校が自らの事業(学校運営の一部等)として実施していると認められる場合は、運転手が外部の受託者であっても、学校の側(学校設置者等)が犯罪事実確認を行う義務を負います。
Q14. 幼稚園や学校に、行事の撮影のために来る写真販売業者(カメラマン)は対象になりますか?
A.
支配性・継続性・閉鎖性の3要件を満たすかどうかが判断基準となりますが、一般的には対象外と考えられます。他の職員や保護者等が同席しないなど、第三者の目に触れない状況(閉鎖性)で児童等と接する機会が想定されないためです。
Q15. 教育実習や保育実習の実習生は対象になりますか?確認を行うのは大学ですか?
A.
実習生が児童等と原則一対一にならない(常に指導教員の監督下にある)ことが大学の実習計画で位置づけられ、実習先でもそれが担保されていれば対象外です。逆に、一対一になる予定の長期実習等であれば対象となります。
この判断を行い、必要な場合に犯罪事実確認の手続きを行うのは、大学側ではなく実習先となる対象事業者(学校や保育所等)の責任となります。
第4章:職種別の対象判定と「3要件」の考え方
ある職種が一律に対象になるわけではなく、実際の業務内容に照らし合わせて個別に判断することが求められます。
Q16. バスの運転手や事務員など、対象になるか迷う職種の判断基準は何ですか?
A.
職種名ではなく、その従事者の実際の業務が、支配性・継続性・閉鎖性の3要件をすべて満たすかで事業者が判断します。
例えば、事務職員であっても、本来業務ではなくとも忘れ物対応などで児童と第三者の目がない状況(閉鎖性)で日常的(継続性)に一対一になることが想定される場合は、対象となると判断されます。事業者ごとに業務の実態に応じて判断してください。
Q17. 学校に勤務するスクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーは対象になりますか?
A.
対象になります。これらの職種は、業務の性質上、他の職員が同席しない状況でこどもと一対一で面談等を行うことが想定されるため、対象となる判断基準である支配性・継続性・閉鎖性の3要件を満たすと考えられます。
Q18. 単発のキャンプ教室の指導を外部に依頼しています。1回の従事期間は単日ですが、年間を通じて定期的に従事してもらう場合、対象になりますか?
A.
対象になり得ます。ガイドラインでは、1回あたりの従事が単発であっても、不定期であっても反復継続が見込まれるなど、年間を通じて複数回従事する場合には継続性の要件を満たすと判断されるためです。
Q19. 嘱託医が複数の学校を年に1回ずつ巡回している場合、訪問回数を合算して継続性を判断しますか?
A.
合算しません。対象となる事業所や施設が異なる場合(対象となる児童等も異なる場合)には、訪問回数を合算して継続性を判断する必要はありません。それぞれの施設における業務の実態(閉鎖性の有無など)に応じて個別に判断します。
Q20. 公立学校の事務職員など、対象業務に該当するかの判断・特定を行うのは都道府県ですか、市町村ですか?
A.
県費負担教職員の場合、犯罪事実確認を行う主体は都道府県教育委員会ですが、防止措置以外の安全確保措置(研修や日頃の指導など)を行う主体は市町村教育委員会となります。したがって、両者で分担・連携して対象業務の判断を行い、こども性暴力防止法に基づく各種措置を実施していく必要があります。
第1回まとめと次回予告
今回は、こども性暴力防止法のQ&Aシリーズ第1回として、事業運営の実態に即した義務と任意、対象と対象外の境界線について20の疑問にお答えしました。
民間事業者の皆様におかれましては、自社の事業が4要件を満たし認定対象となり得るのかを正しく把握することが第一歩となります。また、一体的運営の特例や外部委託時の責任の所在は、事業者の負担や法的責任を大きく左右する重要なポイントです。法の施行に向けて、自社の契約形態や人員配置を今一度見直してみましょう。
次回、Q&Aシリーズ第2回では、現場の指導者が最も悩むグレーゾーンである「不適切な行為」の線引きと、日頃の安全確保措置に関する疑問をテーマに解説いたします。ご期待ください。