ドローンを初めて購入しようとしている皆様、ようこそ空の世界へ!

「綺麗な景色を撮影してみたい」「新しい趣味として始めたい」、あるいは「ドローンを使って副業や新しい仕事に挑戦してみたい」。ドローンを手にするきっかけは人それぞれですが、手元のコントローラーで機体を大空へふわりと浮かせた瞬間の感動は、何度味わっても素晴らしいものです。

しかし、ドローンは単なる「空飛ぶおもちゃ」ではありません。現在、ドローンは「空の産業革命」と呼ばれるほどの大きな変革を様々な業界にもたらしています。そして同時に、安全に空を共有するための厳格な「ルール(航空法)」が存在します。

この記事では、これからドローンを始める方に向けて、「現在ドローンを使った仕事にはどんなものがあるのか」「業界の将来性と可能性」、そして絶対に避けては通れない「飛行許可申請の基礎知識」について、詳しく解説していきます。

この記事を読み終える頃には、ドローンに対する解像度がグッと上がり、安全かつワクワクするドローンライフの第一歩を踏み出せるはずです。


第1章:ドローンが変える私たちの生活とビジネス(業界の現状と仕事)

数年前まで、ドローンといえばテレビ局の空撮や、一部のラジコン愛好家のためのものでした。しかし現在、ドローンは私たちの生活や社会インフラを支える「実用的なツール」として、様々な仕事で活躍しています。まずは、今どのような仕事でドローンが使われているのかを見ていきましょう。

1. 空撮(映像制作・プロモーション)

ドローンの仕事と聞いて、最もイメージしやすいのが「空撮」でしょう。

  • テレビ・映画・CM撮影: 以前は実物のヘリコプターをチャーターして数百万円かけて撮影していたダイナミックな映像が、ドローンなら数万円〜数十万円のコストで撮影できるようになりました。
  • YouTube・SNSコンテンツ制作: 旅行系Vlogや企業のプロモーションビデオなど、個人から企業まで幅広い需要があります。
  • 不動産・観光PR: マンションの眺望確認や、観光地の絶景を上空からPRする用途で重宝されています。
  • FPVドローンによる没入感映像: 最近では、専用のゴーグルを装着して鳥の視点で操縦する「FPVドローン」による、スピード感あふれるアクロバティックな映像制作の需要も急増しています。

2. 点検・保守(インフラ管理)

現在、ビジネスとして最も市場規模が拡大しているのがこの分野です。

  • 橋梁・ダム・送電線の点検: 日本は高度経済成長期に作られたインフラの老朽化が深刻な問題となっています。人が命綱をつけて行っていた危険な高所作業をドローンが代替することで、安全性の向上とコスト削減を実現しています。
  • 外壁点検(赤外線カメラ): ビルやマンションの外壁の浮きやひび割れを、赤外線カメラを搭載したドローンで診断します。足場を組む必要がないため、大幅なコストダウンと工期短縮が可能です。
  • 太陽光パネル(ソーラーパネル)の点検: 広大な敷地に敷き詰められたパネルの中から、異常発熱している箇所(ホットスポット)を上空から一瞬で見つけ出します。

3. 測量(土木・建設業界のDX)

建設業界のデジタル化(DX)において、ドローンは欠かせない存在です。

  • 3D測量: ドローンで撮影した連続写真や、レーザー測量機(LiDAR)を使って、地形の正確な3Dモデル(点群データ)を短時間で作成します。
  • i-Construction(アイ・コンストラクション)の推進: 従来、人が数日かけて行っていた測量作業が、ドローンを使えば数十分〜数時間で終わることも珍しくありません。測量データはそのまま重機の自動制御(ICT施工)などに活用されます。

4. 農業(スマート農業)

高齢化や人手不足が深刻な農業分野でも、ドローンが救世主となっています。

  • 農薬・肥料の散布: 重いタンクを背負って広い農地を歩き回る重労働から農家を解放しました。自動飛行プログラムを使えば、均一かつスピーディに散布が完了します。
  • 生育状況のモニタリング: 特殊なカメラ(マルチスペクトルカメラ)を使い、農作物の育成状況や病害虫の発生箇所をデータとして可視化し、ピンポイントで対処する精密農業が始まっています。

5. 物流・災害対応

「空の配送」は、もはやSF映画の話ではありません。

  • 過疎地・離島への配送(ラストワンマイル): 買い物困難者への日用品や、緊急時の医薬品の配送手段として、実証実験を経て実用化のフェーズに入っています。
  • 災害時の状況把握と捜索: 地震や水害などで人が立ち入れない被災地にいち早く駆けつけ、被害状況の確認や、取り残された人の捜索、孤立集落への救援物資の輸送に活躍しています。

第2章:ドローンの持つ無限の可能性(将来性)

現在でも十分に活躍しているドローンですが、業界の進化のスピードは留まるところを知りません。今後の可能性について触れておきましょう。

AI(人工知能)との融合による「完全自律化」

現在のドローンは、人間がプロポ(送信機)を持って操縦する、あるいは事前に設定したルートを飛ぶのが基本です。しかし今後は、AIを搭載したドローンが自分で周囲の状況を判断し、障害物を避けながら目的地へ向かい、任務を遂行する「完全自律飛行」が当たり前になっていきます。 また、撮影した映像をAIがリアルタイムで解析し、「あそこに亀裂がある」「あそこに遭難者がいる」と自動で判断するシステムの開発も進んでいます。

「レベル4飛行」の普及と日常化

ドローンの飛行形態には技術や危険度を加味したレベル分けがあり、最も難易度が高いのが「レベル4:有人地帯(第三者上空)での目視外飛行」です。 日本でも法整備が完了し、レベル4飛行が解禁されました。今後数年で、私たちの頭上を荷物を積んだドローンが日常的に飛び交う光景が当たり前になるでしょう。

空飛ぶクルマ(eVTOL)への発展

ドローンの技術(複数のプロペラで安定飛行する姿勢制御技術やバッテリー技術)の延長線上にあるのが「空飛ぶクルマ」です。人や大型の荷物を運ぶ次世代モビリティとして、世界中で開発競争が激化しています。ドローン産業に関わることは、次世代の交通インフラに関わることと同義なのです。


第3章:ここからが本番!「飛行許可申請」の基礎知識

さて、ドローンの魅力と可能性をたっぷりお伝えしましたが、ここからが非常に重要な話です。 「ドローンを買った!さあ、近くの公園で飛ばそう!」 ちょっと待ってください!それは法律違反になる可能性が非常に高いです。

空の安全を守るため、ドローン(無人航空機)には航空法をはじめとする様々なルールが定められています。ルールを知らずに飛ばすと、罰金が科せられたり、最悪の場合は逮捕されたりすることもあります。初心者が絶対に知っておくべき基礎知識を解説します。

大前提:「100g以上のドローン」はすべて航空法の対象!

かつては「200g未満」のドローンはトイドローンと呼ばれ規制の対象外でしたが、法改正により、現在は「バッテリーを含めた機体重量が100g以上」のドローンはすべて航空法の規制対象となりました。ドローンを購入の際は重量の確認を忘れずに行いましょう。

義務その1:「機体登録」と「リモートID」

車のナンバープレートと同じように、100g以上のドローンは国(国土交通省)への「機体登録」が義務付けられています。 オンライン(DIPS2.0というシステム)で登録申請を行い、登録記号(JUから始まる番号)を取得して機体にシールなどで表示します。さらに、飛行中の機体の情報を電波で発信する「リモートID」という機器の搭載(または内蔵機能のオン)も義務化されています。 ※機体登録を行わずに屋外で飛ばすと違法となります。

義務その2:「特定飛行」を行う場合は許可・承認が必要

ドローンを飛ばす「場所」と「飛ばし方」によっては、国土交通省へ事前に申請し、許可や承認を得る必要があります。この許可・承認が必要な飛行を「特定飛行」と呼びます。

【許可が必要な「空域(場所)」】

以下の場所で飛ばす場合は、許可が必要です。

  1. 人口集中地区(DID地区)の上空: 国勢調査の結果をもとに定められた、人口が密集しているエリアです。東京や大阪などの都市部はほぼ全域が該当し、地方都市でも駅周辺などは該当します。つまり、「自宅の庭(都市部)」や「近くの公園」で飛ばすだけでも許可が必要なケースが多いのです。
  2. 空港等の周辺の空域: 航空機の離着陸の安全を確保するためです。
  3. 150m以上の高さの空域: ドローンが飛べるのは原則として地上・水面から150m未満までです。それ以上は有人航空機の空域となるため許可が必要です。
  4. 緊急用務空域: 災害時に警察や消防のヘリが飛ぶ空域として指定された場合は、原則としてドローンの飛行は一切禁止されます。

【承認が必要な「飛行の方法(飛ばし方)」】

場所に関わらず、以下の飛ばし方をする場合は承認が必要です。

  1. 夜間飛行: 日没から日出までの間に飛ばすこと。
  2. 目視外飛行: ドローンを直接肉眼で見ずに、モニターやスマホの画面、ゴーグル(FPV)だけを見て操縦すること。建物の裏側に隠れて機体が見えなくなる場合も含まれます。
  3. 人又は物件と30mの距離を確保できない飛行: 第三者(関係者以外の人)や、第三者の建物・車などから30m未満の距離で飛ばすこと。
  4. 催し物(イベント)上空での飛行: お祭りやスポーツ大会など、多数の人が集まる場所の上空を飛ばすこと。
  5. 危険物の輸送: 農薬や可燃性ガスなどを積んで飛ぶこと。
  6. 物件投下: ドローンから物を落とすこと。

飛行許可申請はどうやってやるの?

これらの「特定飛行」を行う場合、国土交通省の「DIPS2.0(ドローン情報基盤システム)」というオンラインサイトから申請を行います。 申請には、操縦者の飛行経験(一般的に10時間以上のフライト経験が求められます)や、安全対策をまとめた「飛行マニュアル」の作成などが必要になります。

申請方法には、飛ばす場所と日時を特定して申請する「個別申請」と、一定の期間・範囲で繰り返し飛ばすための「包括申請」があります。業務でドローンを使う人の多くは、1年間有効な「日本全国での包括申請」を取得しています。

国家資格(無人航空機操縦者技能証明)について

「毎回申請するのは大変そう…」と思うかもしれません。そこで2022年12月からスタートしたのが、ドローンの国家資格制度です。

  • 一等無人航空機操縦士: 前述の「レベル4飛行(有人地帯での目視外飛行)」を行うために必須となる上位資格です。
  • 二等無人航空機操縦士: 取得することで、これまで申請が必要だった「DID地区」「夜間」「目視外」「人・物件から30m未満」の飛行(一部条件あり)について、事前の許可・承認申請が免除されるという大きなメリットがあります。

もちろん、資格がなくても従来通りDIPS2.0で申請をして許可をもらえれば飛ばすことは可能です。しかし、ビジネスとしてスムーズにドローンを運用したいのであれば、自動車の教習所にあたる「登録講習機関(ドローンスクール)」に通い、国家資格を取得するのが現在のスタンダードになりつつあります。


まとめ:正しい知識で、無限の空を楽しもう!

いかがでしたでしょうか。ドローンが持つビジネスとしての圧倒的なポテンシャルと、それを安全に運用するための「航空法のルールと許可申請」の基礎について解説しました。

「ルールが厳しくて難しそう…」と感じた方もいるかもしれません。しかし、これらは裏を返せば「ルールさえしっかり守り、正しい手続きを踏めば、誰でもこの巨大な市場に参入できる」ということです。

初めてドローンを買う方は、まずは以下のステップを踏むことをお勧めします。

  1. 100g以上の機体を買ったら、必ずDIPS2.0で「機体登録」を行う。
  2. 自分が飛ばしたい場所が「DID地区」など規制対象でないか、専用のアプリ等で確認する。
  3. 最初は許可が不要な場所(体育館などの屋内や、郊外のDID地区外の私有地など)で、最低10時間の飛行練習を行う。
  4. さらにステップアップしたい場合は、DIPS2.0での許可承認申請に挑戦するか、ドローンスクールで国家資格の取得を目指す。

ドローンは、これまでのあなたの視点やキャリアを劇的に拡張してくれる魔法のツールです。安全第一で、素晴らしいドローンライフをスタートさせてください!